SSRI の実験結果と広告が違うじゃないか
医療における常識が、実は根拠がないじゃない、という論文。
・セロトニン不足はうつ病のメカニズムの一部だけなのに、セロトニンだけでうつ病が治ると宣伝するのはけしからん
・プラセボ(ニセ薬)を飲ませても、本物の80%も効くじゃないか
・臨床試験結果の57%は、本物とプラセボに差がないじゃないか
・SSRIと古い三環系の臨床試験結果も差がないじゃないか
薬害オンブズパースン会議より:
SSRIに関する広告の問題を取り上げた論文が『Public Library of Science (PLoS) Medicine 12月号』に掲載されている。
管理人・注:これですね
「セロトニンとうつ病:広告と文献の剥離」
Jeffrey R. Lacasse, Jonathan Leo
PLoS Med 2005;2(12):e392この論文はうつ病のセロトニン仮説偏重の問題と、それを作り出しているSSRI広告宣伝のあり方に対する問題提起を行っている。
うつ病はセロトニンだけでなく様々な脳内化学物質が影響している可能性があるうえに、それぞれの生活歴やストレスなどが影響して起こるものなのに、SSRI広告ではうつ病は脳内セロトニン量減少が全ての原因であるかのような表現が用いられている、と指摘している。
SSRIの有効性に関して、論文では2つのメタアナリシスを紹介している。これらのメタアナリシスでは
・プラセボ(本物の抗うつ薬と見かけ上はそっくりであるが、
作用する成分は入っていない偽薬)でも、本物の抗うつ薬に
対する効果の約80%が再現されている・また製薬会社が資金提供した臨床試験のうち57%の試験では、
本物の抗うつ薬による効果とプラセボによる効果との間で
統計学的有意差は示されていないという事実が明らかにされている。
さらにコクラン・レビュー(世界中のランダム化比較試験を集めて治療の効果をまとめたもの)を引用し、SSRIと従来から使われている三環系抗うつ薬との間にも、効果において統計学的有意差はないことが示されていると指摘している。企業によりセロトニン仮説を強調したマーケティングが行われている一方で、SSRIの有害性(副作用や薬からの離脱が困難になることなど)や薬物療法以外(認知行動療法など)の重要性などについて十分な情報提供がなされていないことを問題としている。
管理人より:
一般向けの本だとモノアミン仮説はまだ正しいことになっていますが、研究者はもう信じていません。「セロトニンとノルアドレナリンが減っているから、それさえ足せばうつ病は治る」というやつですね。
モノアミン仮説は、モノアミン以外に健康とうつ病の差が見つかっていなかった時代の古い仮説です。今ではこのほかにもたくさんの脳の異変(部位ごとの萎縮や機能低下、血流低下)が起きていることが分かっていますから、モノアミンだけでうつ病が治ると考えるのは無理があります。
実際にやってみても効果がないじゃないか、というのがこの論文です。
あと、
> ・プラセボ(本物の抗うつ薬と見かけ上はそっくりであるが、
> 作用する成分は入っていない偽薬)でも、本物の抗うつ薬に
> 対する効果の約80%が再現されている
ですが、このカラクリは「どんなプラセボでも 30%位の人には効いてしまう」からです。つまり有効率(飲んだ人のうち効いた人の割合)が40%くらいの薬だったら「効いた」と言えない程度の成績とも言えます。
ちなみに SSRI の有効度って 50%前後なので、まぁ微妙ですねぇ。
※当サイト(うつ病ドリル)はアンチ抗うつ薬ではありません。「使うけど過信はしない」派です。
研究者の間では「うつ病は薬で治るよワッショイ」って人はいません。でも医者の情報源はこういった研究者の論文ではなく製薬会社の営業マン(MR)になってきているので、医者の知っている選択肢が薬しかなくなるのは仕方ないです。MR 大増員、っていうニュースはしょっちゅう出ています。
結局、自分の病気は誰かが治してくれるのではなく自分で面倒を見る、と覚悟しないとダメです。
インフォームド・コンセントが求められていますが、医者に説明を求めるということは患者側にもそれを理解するだけの知識が必要とされる、ということです。
オマケ:
先日本屋で一般向けのうつ病本を立ち読みしていたら、2001年発行の医者が書いた本に「日本ではSSRIがまだ存在しない」と書かれていました。その2年前の1999年からあったんですけどね。なんだこれ…
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| 2006年01月19日 11:18 | | この記事のアドレス URL |
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