ジェイゾロフトの臨床試験は、本当に「OK」だったのか?(前編)

期待の新薬、抗うつ薬ジェイゾロフトをめぐり、発売元のファイザー社と日本の精神科医の団体がもめていたことをご存じでしょうか。日本精神神経科診療所協会(日精診)が同社に公開質問状をつきつけた一連の騒動、7月22日の朝日新聞記事でも取り上げられ、一部の医院はジェイゾロフトの投与を避けるなど、すでに臨床の場へも影響が出ています。

そもそも騒動の発端は、同社の宣伝冊子中にある、矛盾した記述でした。同薬がうつ病他に対して「優れた効果を示し」と書かれている同じページ内のすぐ後に、「効果を保証するには不十分」とほぼ正反対の記述があったのです。

「効くの、効かないの、どっちなの?!」と首をかしげたくなるこの冊子。同社は公開質問状の質問にはほとんど回答しないまま、宣伝冊子の配布をこっそり取りやめました。その対応を受け日精診は7日、新たな声明文を公表。ひとまず事態の沈静化をはかる構えを見せています。

短い期間で事態は収束に向かいつつありますが、この経緯を患者側が目にする機会はあまりなかったのが実情。そこで一連の経緯をまとめた上で、医師らは新薬の何を気にしていたのか、3回に分けて解説していきます。

日精診の公開質問状、2つの論点
まずは日精診の出した公開質問状の内容をおさらいしましょう。質問は全部で5つ。その論点は大きく2つに分けられます。
論点1. 「(同薬の)効果が不十分」と書かざるを得なかったのはなぜか
論点2. 「再燃予防効果がある」との宣伝は、根拠があるのか


論点1 どうして「効果が不十分」って書いたの?
国内の承認審査を経て「有効」とされた薬物に対し、宣伝冊子中でなぜあえて「効果が不十分」とつけ加えたのでしょうか。質問1,2では、わざわざこのような記述がなされた経緯と、具体的な治験データ、および同社の解釈・判断を示すよう求めています。


論点2 「再燃予防効果あり」って、ホント?
ファイザー社の宣伝文書には、同薬が「国内臨床試験において(中略)うつ病・うつ状態については、再燃抑制効果が認められました」と書かれていますが、この記述そのものを疑問視するのが質問3,4,5です。
実は、公開されている承認審査報告書内には「再燃抑制効果を認める」との記述はありません。そのため日精診は、上記の宣伝には根拠がないと主張。さらに同社冊子内の「ランダム化治療中止試験で再燃抑制効果を検証できる」とする記述に対しても、根拠が薄いと疑問を呈しました。


沈黙を守るファイザー、事態収拾にかじをきった日精診
日精診の出した公開質問状に対し、ファイザーは7月3日に書簡を提出。しかし質問に対して回答があったのはごく一部で、日精診は対応を不服として7月22日、会員医師らに対し「同社の説明会等で積極的に議論せよ」「同薬の処方はリスクとベネフィット(利益)をよく考えて決断するように」との声明文を出しました。
それから約2週間、日精診はファイザーからの回答を待たずして7日、新たな声明文を発表しました。文中ではファイザーからの回答がないことを遺憾としながらも、事実上の終結宣言がなされています。

患者にとって重要な情報は、期待の新薬ジェイゾロフトがどのくらい信頼できる薬なのか、その一点です。日精診の出した質問状の内容は、患者側にとっても、薬を選択する上で重要な情報を含んでいました。事態を把握した上で、患者側も今後の推移を注意深く見守っていきたいものです。


佐藤未果

この記事はシリーズ連載です
前編中編後編


・参考資料:経緯の流れ

199■年■月 (■は原文ママ)
ファイザー社、日本にてジェイゾロフト(一般名:塩酸セルトラリン)の臨床試験開始(実薬対照非劣性試験(*1)を含む)
1998年3月24日 ファ社、ジェイゾロフトを承認審査申請。審査センターは再検討を要請
2004年2月25日 ファ社、追加臨床試験(ランダム化治療中止試験(*2))の結果を提出
2006年4月20日 ジェイゾロフト承認、日本国内で販売可能に
6月   ファ社、全国の医師らに対しジェイゾロフト製品情報冊子(宣伝冊子)の配布を開始
6月27日 日精診、ファ社に対し5つの質問からなる公開質問状を送付<リンク>
6月28日 日精診、ファ社に送付した質問状の意図を会員に説明する文書を公表<リンク>
7月 3日 ファ社、日精診の質問のうち1つだけ書簡で回答。その他4つの質問には沈黙<リンク>
7月 5日 日精診、会員に対し「ファ社の今後の対応に注目せよ」との要請文送付(未公表文書)<リンク>
7月 7日 ジェイゾロフト販売開始 ファ社はほぼ同時に宣伝冊子の配布を中止
7月22日 日精診、7/3のファ社回答を不服として理事会声明文を発表<リンク>
8月 7日 日精診、7/3のファ社回答を精査する理事会声明文を発表<リンク> 事実上の終結宣言

・参考資料:日精診の公開質問状、5つの質問の内容(論旨を保って編集済)

1)「はじめに」ページの「専門の先生方へ」枠内の文章は、誰に言われて書いたのか
2)「効果が不十分」とあるが、実際の治験データはどうなのか、またどう解釈したのか
3)日本初の「うつ病の再燃抑制効果」が審査・認定されたのなら、治験資料を開示せよ
4)「ランダム化治療中止試験で再燃抑制効果を検証できる」と説明する文があるが、これは誰かのお墨付きを得ているのか
5)ランダム化治療中止試験では「離脱症状」や「薬が効く人だけに限り試験する」影響が無視できないと思うが、影響はどう除いたのか


--
*1 実薬対照非劣性試験……既存薬と比べて新薬の有効性が劣っていないことを検証する試験法。詳しくはこちら、あるいはこちらのp.7, 項目1.4.1

*2 ランダム化治療中止試験……一定期間治療を受けた被験者群をランダムに治療継続または治療中止に振り分け、経過を見る試験法。
詳しくはこちら。左記リンク先のさらに元はこちらの p.21, 項目2.1.5.2.4

 

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  | 2006年08月09日 19:58  | この記事のアドレス URL  |

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