(講演レポート)うつ病休職者のリワーク支援 -働く場への心の回復-

2009年7月17日(金)、東京都渋谷区の津田ホールにて「うつ病求職者へのリワーク支援 -働く場への心の回復- 」という講演が行われました。
その聴講レポートをお送りします。


精神研都民講座
平成21年度テーマ「心の回復力とは何か」

第2回「うつ病求職者へのリワーク支援 -働く場への心の回復- 」
平成21年7月17日(金) 津田ホール(東京都渋谷区)

講師:東京都立中部総合精神保健福祉センター 生活訓練科長
精神科医・産業医 菅原誠先生


うつ病はもう「他人事」ではない

 年々増え続け、いまや特別なものでない、誰にも起こりうる病気として認識されてきた「うつ病」。厚生労働省の調査によると、日本でのうつ病患者はここ10年で2倍に増えているという報告もあります。
 また米国NCS調査によると、うつ病の生涯有病率は女性で21.3%、男性で12.7%。いわば女性の5人に1人、男性の7〜8人に1人が、一生のうちにうつ病にかかるともいわれているのです。

 うつ病により長期休職せざるを得なくなるということは、自身の生活にとっても、企業にとっても大きな痛手です。病気にならないような生活環境、職場環境を整備することはもちろんですが、もし病気になってしまった場合の、家族の対応、企業の対応をしっかりと認識しておくことも、とても大切なことだと思います。

 というのも、うつ病は80%の割合で再発し、復職4年目までに45%の人が1回以上再発しているという報告があるのです。これは、もともと本人に「うつ傾向」があるということはもちろんですが、せっかく病気が改善しても、本人を取り巻く環境が変わらなかったり、周りがふさわしくない対応をしてしまったり、ということも大きな理由として挙げられることではないかと思います。
 まず「うつ病」をもっとよく理解し、家族ぐるみ、会社ぐるみで病気を改善していく努力が必要なのではと思います。


うつ病患者の家族や職場へのアドバイス

● 本人の言動に振り回されない
・ 甘えや依存、攻撃などいろいろな反応を家族に対してみせるのが普通
・ 干渉しすぎず、放置することなく、見守ることが必要

● 症状に一喜一憂しない
・ 波状経過を取りながら回復する病気であることへの理解を深める

● 「うつ病は怠けではない」ことの確認
・ 講演の受講などでうつ病に対する理解を深める
・ 休むことも治療の一環であることへの理解を深める
・ 外野からの誹謗中傷に同調しない

● うつ病になった理由や原因の探索をしない
・ 多くの場合、前向きな結論にはなりにくく無意味
・ 治療上必要な場合は医師が行う

● 大事な決定は先送る
・ 転居、転職、離婚など

● ストレス要因は排除する
・ 気分転換と称して無理に旅行などに連れ出さない、関係の悪い人と会わないなど

● 一人で問題を抱え込まない
・ 燃え尽きに注意、家族の受信やカウンセリングも時には必要

● 制度や施設の上手な利用
・ 経済面では、公的医療費負担制度、傷病手当金などの申請
・ 保健所や精神保健福祉センターへの相談、うつ病デイケア、復職支援施設の利用

● 自殺のサインに注意

(東京都立中部総合精神保健福祉センターによる)


病気に逆戻りしないための「復職リハビリテーション」

 うつ病により休職していた人にとって、「復職」は喜ばしいことではありながら、本当に自分は復職可能なのか、これから本当に大丈夫なのかなど、とても大きな不安を抱えているものです。そして、病気療養中の生活リズムから日常生活のリズムの変化に対応できなかったり、無理をしてしまった結果、再び休職に追い込まれるケースも多いようです。
 主治医は患者の、体面や収入不足、リストラへの恐怖などからの焦りからくる「もう大丈夫」という自己判断を信用しがちで、企業にとっては、メンタルヘルス対策の遅れや、健康管理スタッフの不足、復職支援制度が未整備で、適切なアドバイスをすることができない会社が多いのも現状のようです。

 そこで、「客観的」に復職の支援をする専門施設として設立されたのが、東京都立中部総合精神保健福祉センターの「復職リハビリテーション」です。
 これは、うつ病で休職中の方を対象とした、復職のための訓練・支援を行う精神科デイケアで、再休職予防に向けた心理教育はもちろん、仕事に最低限必要な体力、集中力、協調性を確認し、事務処理能力の回復など、より「実践的」なリハビリテーションとしての役割をもち、成果を上げているようです。(詳細は資料B参考)

 うつ病といっても、そのタイプはさまざまです。責任感が強く、休職したことへの罪悪感を感じ、病気が快方に向かったからといってすぐに復職しようとするタイプの人もいれば、自己中心的で他罰的な「ニュータイプ」のうつ病の人もいます。これらすべてに同じ対応ではなく、「背中を押す」のか「ブレーキをかける」のか、また教育的指導ではなく本人に「気づき」をもたせるのか、それぞれに合った復職支援をすることで、本当の意味で「完全に」病気を改善し、日常生活を送ることが可能なのだと思います。

 社会情勢はますます「うつになりやすい」状況になってしまっていますが、多くの人が協力し合って、うつに負けない、明るい社会にしていこうとする心構えが、なによりも必要なのだと思います。


うつ病リターンワークコース

● うつ病で休職中の方を対象とした、復職のための訓練・支援を総合的に行うデイケア
・ 週4日午前午後実施
・ 他職種構成(Ns、OTR、心理、福祉職など)、精神科医

● 申込みに必要な条件
・ 在職中で、通所に主治医の許可が得られる
・ 職場からの通所許可は必須ではないが、理解があることが望ましい
・ 気分障害圏の主診断で通院し、復職リハを開始する時期にある
・ 人格障害の主診断ではなく、現在アルコール・薬物依存ではない
・ 在職中で、都内在住もしくは在勤(年齢、勤務先の公・民は不問)

● 利用期間
・ 原則6か月以内

● 特徴
・ 主治医変更の必要がない(他医療機関では要主治医変更が多い)
・ 診断と復職時期の見立て(セカンドオピニオンとしての役割)
・ 事務職にも現業系にも対応できる多才なプログラムと個別支援の重視
・ 退職した事例の再就労支援もワークトレーニングコースで可能
・ 事業場の視点に立った復職可能性の判定は行っていない

(東京都立中部総合精神保健福祉センターによる)

 

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  | 2009年07月28日 13:23  | この記事のアドレス URL  |

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