(講演レポート)脳と栄養のシンポジウム
2009年8月23日、東京・ニッショーホールにて、「脳と栄養のシンポジウム」が開かれました。
講師は新宿溝口クリニック院長である溝口徹先生をはじめとして、医師・研究者・病院理事長など、5名による多彩な内容で行われました。
午前中は落語家による公演も披露されました。
編集部よりお知らせ:
この講演の前年度(2008年)の模様を収めた DVD をお分けしています。
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オーソモレキュラー療法(分子整合医学)の基礎と臨床
医療法人 回生會 新宿溝口クリニック 院長
溝口 徹 氏
現在の精神科で行われているのは、患者の主観的な症状に基づく診断と、脳の中の代謝を変化させるための投薬である。
問題点として、症状と原因が必ずしも一致しないので(うつ=セロトニン不足だけ、とは限らない)、投薬で結果が必ず出るとは限らない。
一方で、オーソモレキュラー療法の考え方は「脳細胞の働きは、細胞を構成している分子と、細胞を働かせる物質の濃度で決まる」というものである。
具体的には
- 脂質(脳を形作る)
- たんぱく質( 〃 )
- ブドウ糖(脳のエネルギー)
- 神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、GABA など)(働きを調整する)
などによって脳の働きが決まる。
例えばコレステロールが低い場合、自殺や事故が増え、攻撃性も高まりやすくなる。
特に糖については、血糖値が不安定になるということは脳にブドウ糖の供給が不安定になるということであり、脳の機能障害を招く。
また砂糖やカフェインなどは興奮系の神経伝達物質を増やして精神を不安定にさせてしまう。
血糖値は高低だけを見るのではなく、最適な濃度で安定させ、急変動させないことが大切である。
糖質制限の基礎と臨床 〜脳に糖質は必要か?
財団法人 高雄病院 理事長
江部 康二 氏
人間が狩りと採集で暮らしていた時代の食生活は、現代で言う「糖質制限食」のようなもので、血糖値はほとんど変動しなかった。
4,000年前に主食が穀物となり、血糖値が変動するようになった。
そして最近の200年、精製した炭水化物によって血糖値が急変動する暮らしになっている。
血糖値が急変動すると、体は血糖値を安定させようとして自然治癒力を浪費し、疲れてしまう。
脳はブドウ糖しか利用できないというのは間違いで、ケトン体(脂肪を分解したもの)も利用できる。これは脳だけでなく体全体についても言える。
ケトン体は心筋や骨格筋などで日常的に利用されており、断食や糖質制限食によって体内のケトン体は増える。
難治性てんかんの治療に、摂取カロリーの75%〜80%を脂肪にしたケトン食というものがある。血中のケトン体そのものが脳の発作を抑制するのでは、と考えられている。
糖尿病や肥満の原因は、カロリーの過多ではなく糖が多い食生活にある。
血糖の急変動は血管を痛め、糖質を制限すると代謝が改善し、アレルギーやメタボも改善する。
精神科医療の現状と問題点
東京医科大学 精神科 准教授
市来 真彦 氏
精神科は心でなく脳を扱う。心の問題は脳の病気の症状である。
だから医者は患者の話を聞かない。薬の種類や量を決めための情報がないからである。
治療法:
薬がない時代は作業療法や通電療法、薬が出来てからは入院での多剤多量の投薬が行われていた。
しかし治療成績は良くなかったので、現在は在宅中心・単剤少量が理想とされてきており、薬と非薬物(生活療法や精神科リハビリテーションなどの社会的療法など)を両輪として行っている。
診断と治療:
適切な診断と適切な治療が必要だが、DSM(診断基準)は診断のみであり、治療法は書いていない。
また、まずは体の病気を除外する必要があるのだが、精神科は採血をしないことが多いので、万全な診断は出来ていない。
薬:
睡眠薬・抗不安薬…すぐに効く。依存しやすい
抗うつ薬…ゆっくり効く。減らすのは大変
指示を守らず自分で調節する人が2割ほどいる。投薬治療の満足度は仲間内での会話での満足度より低い。
最小限の適切な薬を適量飲むべき。
健康:
健康の基準には、「病気でないこと、薬が減ったこと、食欲があること」など医師が気にする項目の他に、「夢がある、人間関係、食事がおいしい」など医師が気にしない項目も必要。
「治る」とは?:
精神科の患者でも、一般に風邪の時と同じ「病気前の状態になりたい」という考え。
実際には、慢性疾患は「治る」ではなく「付き合う」が良い。
新しい健康の定義を示したい。それは病気度(0〜10)+元気度(0〜10)。
病気度は病名や各種の数値を踏まえた主観。
元気度も自分なりの物差しで考えた主観。
病気があっても元気に行きよう、元気度を高めよう。
シンポジウムディスカッション
Q. 生活習慣とメンタルな病気は関係あるか?
A. 10,000人を4年間追ったところ、
- うつ病を発症した人:朝食べない、間食・夜食あり、しょっぱいものが好き
- 大丈夫だった人:野菜・魚を食べる、運動する、タバコを吸わない
Q. 投薬と栄養療法で回復した後にどんなケアが必要か?
A. 脳が回復するので仕事や勉強に取り組めるようになるが、病気が長期間続いているほど社会とのズレがあるので、集団療法や精神リハビリで支えることが必要。(廣瀬氏)
Q. 回復によって可能性や活動性が上がるとストレスも生まれる。本人や家族はどう対処すべき?
A. 悪くしないために入院という考えもある。また、起きうる症状や療法などの予測を話して対処しやすい心構えになっておいてもらう。(市来氏)
Q. 笑いを増やすには?
A. 気の合う人と話す時間を増やすと自然と笑う時間が増える。笑いのビデオや本を自由に見られる病院もあるが、基本は人との会話。お見舞いが多い人ほど長生きするというデータもある。(大平氏)
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| 2009年10月14日 16:16 | | この記事のアドレス URL |
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