うつ病カウンセリングの会話実例
うつ病でのカウンセリングって、具体的にどういう会話が話されているの? という実例を、カウンセラーの粟野剛史さんに教えて頂きました。
途中、「この会話はこういう狙いでしているんだよ」という解説コメントを粟野さんに挟んで頂きましたので、単純に第三者として会話を聞いていては分からないところまで理解できるようになっています。
※この会話は、粟野さんが使われている NLP という技法をふんだんに取り入れたものです。カウンセラーによって技法は様々ですので、この例はあくまで粟野さんの場合とお考え下さい。
粟野さんの紹介ページ → 心と体の統合セラピー:ニューロ・ソマティック・セラピー
キング:鬱歴11年です。
直接の原因はある中学校への転勤です。もう日々午前様で朝も6時半には出勤し、いつも殺人的な忙しさで、平成10年に入れられたのですが、もうその時から酷いうつ状態になっていました。
平成11年の夏休みまで何とか耐えましたが、8/13 に睡眠薬多量服用で自殺未遂しまして。
今はだいぶ良くなりましたが、去年職を失い、今は家内に食べさせて貰っております。
カウンセリングも受けましたが、所詮は僕の日々の生活を知っているわけでもなく、かつ費用が高いのでやめました。
粟野:早速質問になるのですが、現在、キングさん自身から見て、ご自分の心と体の調子はどうでしょうか?
医者の見立てではなく、あくまでキングさんご自身の主観として。
キング:心は、安定剤や抗不安薬を飲んでいるときはある程度安定してきましたが、それでもしばしば不安・憂鬱・焦り(11歳と16歳の子どもの進路費用やいつ仕事に就けるかなど)が出てきていても立ってもいられないほどのものが押し寄せます。
今は無気力・無意欲です。
体はここ一年、引きこもり半分・車でちょっと出るのが半分で運動不足のせいか、手足の痛いような冷感・それに反して頭部や顔・背中などの大量発汗・頻尿などがあり、くわえて首や肩のガチガチの凝りがあります。
(解説)うつ病、という病名はひとつでも、ひとりひとり実際の症状は違います。ここでキングさんが書かれた内容がご本人にとっての悩みの正体、となります。キングさんはそうでもなかったのですが、病名に惑わされてしまう方もいらっしゃるので確認をしました。
粟野:あ、なるほど。大変そうですね。
では、ちょっとお伺いしますが、「なんだか分からないけれども、理想の状況が実現できてしまう」としたら、どんな状況が理想ですか?
キング:@10年前のように、仕事でも家庭でも元気に明るく暮らしていきたい!
Aあまり無理せずに快適なペースでそこそこ明るく生きたい
ですかね。
(解説)うつ病の改善に限らず、自分の生活に何か変化を起こしたいときは、できても出来なくてもまったくかまわないので、とりあえず目標を立ててみる、ということが必要です。そのため、キングさんがどのような生活を望むか、が大事になります。
粟野:わかりました。
で、ちょっとお伺いしますが、@の10年前のときを思い返したときって、気分的にはどうですか?
気分は上々? それとも多少マシなくらい?
キング:教師として研究もしていたし、家族で旅行も出来たし、二人で働いていたから多少の贅沢も出来ました。今から思うと輝ける日々ですね。
(解説)うつ病で悩まれている方も、昔の良い思い出などを思い出すと、気分がその瞬間だけはある程度改善します。心理療法の世界では「リソース」と呼んでいます。その人が望む状況を実現するために使える資源、ということになります。
粟野:なるほど。やっぱり殺人的に忙しい、というケースで鬱になる方は多いですね。
じゃあちょっとお伺いしますが、もし私がキングさんに「あることがきっかけで鬱にどーんと落ち込むことがある反面、別のきっかけで急に元気になったりすることもあるんですよ」って言ったら、キングさんはどう思いますか?
キング:信じられません!!
粟野:ですよね。どのへんが信じられないか人によって違うのですが、そのへんを教えて頂けますか?
(解説)うつ病が長引いた場合、今までの経験から、「何をやってもダメだ」という考えが出来上がってしまっている可能性が高く、これが改善の障害になることもあるため、カウンセラー側としては確認をしなければならない場所です。
キング:だって、ここ10年、気分が高揚したことがないし、心の底から笑ったこともないし、去年辞めるまで学校でキレたり問題起こしてしまったりで、とにかく一度この病になるともう社会復帰は厳しいと実感してます。
粟野:でも社会復帰はしたい部分もある、ということですね。
キング:はい。デイケアの社会復帰コースに行く予定です。医師は以前学校を休職していた折りに聞いたところ「あなたにはデイケアは合わない」と言ってましたが、この間見学させていただいて、「ここなら人間関係から規則的生活から体力回復まで何とかなりそうだ!」と思ったので。
(解説)ここで、キングさんに、「社会復帰は厳しい」という考えと、「でも社会復帰したい!」という考えが共存していることを確認していただきました。
粟野:体調が大変なのに動こうというのは尊敬します。ホント。
キング:いや、そこを医師が注意しろと言うんですよ。調子の比較的いいときにバタバタ動くなと。それが次の鬱につながるんだと。でも、自分は躁うつの症状からバタバタしているのでなく、家に閉じこもっているとさらに憂鬱や不安にどうしようもなく苛まれるので、仕方なく社会復帰への道を模索してきたんです。個別指導塾の講師も週2日ですが嫌々やっています。
粟野:なるほど。
キングさんご自身、医師の方の言うことを聞く気になりますか?
(解説)医師の方に対する不信感がストレスになっている部分もあるようなので、そこをある程度明確にする必要を感じての質問です。(医師の方の言うことを聞かなくて良い、ということではありませんので念のため)
キング:いつ行っても5分診療だし、うつ病だと言っておきながらカウンセリングセンターへの紹介状には「躁うつ病」って書いてあるし、いつも同じアドバイスしかしないし、もう毎回同じ事言われるだけで治る見込みもないなぁと思ってます。
粟野:なるほど。医師不信とおっしゃっていたのはそういうところにもあるわけですね
デイケアって、ペースはどのくらいですか?
キング:まだ具体的な話はこれからです。
粟野:なるほど。
あくまで提案なのですが、もしも「バタバタ動く」というものに伴うリスク(調子の比較的が良い時にバタバタ動くことが次の鬱につながる)が、キングさん自身にとって気になるものならば、デイケア側の医師にペース配分などのアドバイスを仰いでみる、というのはいかがでしょうか?
キング:はい。そうしてみます。勿論デイケアに毎日行くつもりはありませんし、徐々に…焦らずに、と考えています
粟野:焦らずに、ですね。
では、ちょっとここで、今後のプラスになるような脳と心のエクササイズをやってみたいのですが良いですか?
内容は、将来元気になるために、今できることをやる、ということをやりやすくするものです。
(解説)ここから先は、カウンセリングというよりも、元気になりやすい仕組みを脳と心に作る、という内容です。NLP(神経言語プログラミング)を始めとした、ブリーフ・セラピーという分野の技術を活用しています。
キング:はあ
粟野:最初に、未来の目標として、10年前以前の元気な状態で、キングさんが気に入っているペースで生活している、というのを簡単に想像してみてください。
どんなテンションで生活しているのが理想だろう、どんな生活ペースなんだろう、と。
キング:仕事も楽しく、やりがいがあり、子どもや妻とも旅行に行ったり笑顔が絶えない日々…
他人の視線に縛られ、町の人皆に白い目で見られるこの町ではない所でのびのびと暮らす。
今の町は学校が3つしかなく、その2つで問題を起こしてしまったので、物凄く人の目を避けています。怖いんです。自分の基準が無く、周りの目で自分を脅迫的に責めてしまう。
粟野:なるほど。
別の町で暮らしている。人の目があっても普通でいられる。仕事が楽しい。やりがいがある。お子さんや奥さんと旅行にも行っている。そんな笑顔が絶えない日々。
(解説)怖い、などの表現がキングさんの言葉にありましたが、実はこういう言葉が心を重くする作用はかなり強いです。単に問題の裏返しでしかなくても、「普通でいられる」など、望む状況に合わせる言葉に置き換えて、ストレスの度合いを減らすことを狙いました。
キング:そうです
粟野:ちょっと改めてイメージしてみてください。
キング:体も元気に動くし、子どもとスポーツにも参加できそうです。
そうですね、スポーツというか体を少しでも動かせるようになりたい。
あと、明るい気分になりたい。
(解説)先ほど出た過去の良い思い出を思い出すのと同様、明るい未来を想像する、というだけでも、その瞬間変わります。
できれば修士論文の続きを極めても見たい
夢ならたくさんありますが、今は努力できないんですよね。
粟野:それがすごく大事です。夢があること。
これが元気になるツールになります。
今は元気でなくてもいい。
目標といっても、達成できなければダメ、というものではなく、こうなったらいいな、という範囲の話です。
では、あらためてそのいろいろな夢があって、それを実現するために、キングさん的に焦らず徐々に… という範囲で、できることを挙げてください。
この範囲だったらどうにかなるかな…、という無理のないレベルで。
キング:まずはデイケアで週に2回でも3回でもいいから自分のために楽しく復帰訓練をする。
それから、塾勤務は辛いけど、多分転職は難しいからこの塾講師をとりあえずは続けていく。
あとは精神障害者就労センターというところで最終的にはハローワークと提携して就労斡旋してもらう、かな?
粟野:OKです。
では、
「私には夢がある。別の町で暮らしている。人の目があっても大丈夫。仕事が楽しい。やりがいがある。お子さんや奥さんと旅行にも行っている。そんな笑顔が絶えない日々。元気にスポーツもでき、修士論文にも再度取り組んでいる。そんな未来のために、今私はデイケアで自分のために復帰訓練をしている。塾講師を続けている。就労斡旋してもらう準備をしている。」
この文、小声でいいから1回読み上げてください。
キング:できました。
粟野:では、仕上げに入ります。
今の気分を何か身振り手振り、ポーズで表現してください。どんなポーズでもいいです。大きくても小さくても。
キング:背伸び、ですかね
粟野:OKです。では、その文を見ながら背伸び、というのを数回繰り返してください。
キング:できました。
粟野:OKです。では、1回深呼吸して、肩とか首とかほぐしてください。
キング:できました。
粟野:で、宿題といってはあれなのですが、その背伸びのポーズ、ヒマがあるときに積極的にやってみてください。
そうすると、先ほど読み上げた内容に脳と心が向かいます。
2週間くらいの間、そのヒマがあればポーズ、というのをやってみてください。
その期間があればかなり定着しますので。
(解説)未来に対する期待を抱いたときに気分が良くなる、という条件反射が、これをやることで生活の様々な場所で出やすくなり、心のコンディションの底上げができる、というエクササイズです。
今日の残りの時間を含め、今後いい方向に行くといいですね。
キング:ほお!それは楽しみです。夢を唱えながら背伸びで良いんですね。
粟野:なれてきたら、夢を唱えずに背伸びだけでOK。
ただ、文を読むときは、あの文の通り読んでおいてください。
このログからコピーして保存することをおすすめします。
キング:はい!どうもありがとうございました!10年は長かったですが、まあ魔法はないと思うので、ボチボチやります。
ところで、急に治るなんて、先生、あるんですか?(笑)
粟野:急にはないです。
ただ、着実に治る方向に向かっている自分、というのを脳にインストールする、という働きかけ、というのが今日の内容でした。
キング:たまにどうしようもないくらい落ち込むことも減りますかね?
粟野:うーん、それは徐々に… ですね。
元気が戻ってくる、活動レベルが上がってくるにつれて頻度は減ると思います。
キング:教育現場で日々消耗してたから治るものも長引いたとは思いますが、今は辞めたので治るような気もします。
粟野:ですね。環境変わるといろいろ良い方向には行きやすくなります。
キング:ではやってみます。ありがとうございました。感謝いたします。
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| 2009年10月15日 13:13 | | この記事のアドレス URL |
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