(講演レポート)心が安らぐ睡眠のとり方
2009年10月14日(水)、津田ホール(東京都渋谷区)にて、精神研都民講座「心が安らぐ睡眠のとり方 」という講演が行われました。
その聴講レポートをお送りします。
精神研都民講座
平成21年度テーマ「心の回復力とは何か」
第4回「心が安らぐ睡眠のとり方」
平成21年10月14日(水) 津田ホール(東京都渋谷区)
講師:東京都精神医学総合研究所研究員 本多真氏
眠らないとどうなるか
ラットを眠らせないという実験では
・10日後……食事量は1.8倍に増加、しかし体重は12%も減
・2〜3週間後……白血球数が増加するも殺菌能力低下、敗血症から死に至る
これは水だけを与え、エサは全く与えなかった場合より短命とのことです。
人間では、17時間連続起きている時の作業能率は、血中アルコール濃度0.05%(免停と免許取消の境界)の作業能率と同じぐらいになるそうです。
「全く眠らない」のみならず、「寝不足」でも人体に悪影響が出ます。
1日に4時間だけの睡眠を6日続けたあとでは、コルチゾール(ストレスがあるときに出るホルモン)や血糖値の大幅な増加が見られたそうです。
また、アルツハイマー病でたまるタンパク質「アミロイドβ」は起きているときに増加、眠ると減少します。
このように睡眠は非常に重要な働きをします。
睡眠の役割
睡眠の役割については、まだ解明されていない部分が大きいのですが、睡眠中の脳の働きとして以下の3つがわかっています。
1.神経細胞を維持する
2.目覚めたときに神経細胞が働くための準備をする
3.シナプス(神経細胞同士のつなぎ目)を減らす
このうち3.については、起きているときに蓄積された膨大な情報を不要なものと必要なものとに分け、不要なものを消去する働きを持つのではないかと言われています。
睡眠によって、脳は恒常性(生命を維持するために、さまざまな環境の変化に対応して体の状態を一定に保つこと)を保つための基盤を回復していると考えられています。
睡眠の調節は光が決める
いわゆる「寝ぼけ」の状態では、脳は睡眠と覚醒の両方の状態を示します。
よって「睡眠」と「覚醒」とは、同じスイッチのオンオフではなく、それぞれ独立したシステムと考えられます。
「睡眠」「覚醒」のスイッチは同じ視床下部というところの、きわめて近い場所にあります。
海外旅行に行くといわゆる時差ボケが起きることからもわかるように、「睡眠」と「覚醒」の時間は体内時計が決めています。
この体内時計を調節しているのが光です。
睡眠を促すホルモンとして知られるメラトニンは、強い光を浴びると分泌がストップします。そして普段眠りにつく時間帯の1.5時間ぐらい前から増え始めます。
夜間にコンビニなどの強い光(1000〜2000ルクスぐらい。普通の室内は300〜500ルクス)を浴びると、なかなか寝付けなくなるのはそのためです。
よい睡眠のために
1.光でリズムを作る
不眠を訴える高齢者を対象にした研究で、昼間に強い光(1000〜2500ルクス)を浴びるとメラトニンの分泌量が回復することがわかっています。
このように昼間、明るいところで活動することが重要です。
2.体温のリズムを作る
脳の温度を下げることが深い眠りをもたらします。
就床時に体温を下げるためには、床につく2〜3時間前に運動・入浴などをして一度体温を上げ、体温のメリハリをつけることが有効です。
また、効率的に熱を放散するためには血行をよくしなければならないので、半身浴・足湯なども有効と考えられます。
3.食事でリズムを作る
これもよく言われることではありますが、夕方以降のカフェインや寝酒・寝タバコ、就寝前の大食など目を覚ましたり睡眠を浅くしたりするようなものは避けます。
4.リラクゼーションを取り入れる
ストレスホルモンを減らし、副交感神経を優位にすることが睡眠を促します。
就寝前は意識的に緊張を解き、スイッチをオンからオフにすることが重要です。
牛乳やハーブティーを飲む、ゆったりとした音楽を聴く、など各自にあったリラックス法を見つけましょう。
5.睡眠の知識を生かす
不眠を訴える人の多くは「8時間寝られない」「床についてから数時間たっても寝付けない」と訴えるのだと言います。
日中スッキリ過ごせるならば8時間に満たなくても睡眠時間は十分であること、習慣的な就寝時刻の2〜4時間前は眠りにくいということを知っていれば、このような不安は取り除かれます。
眠れないからと早々と床につき、「眠れない」と思いながら床の中で過ごしていると、ストレスに反応してコルチゾールが増加します。すると体温が上がり余計に眠りにくくなってしまいます。
心身と睡眠の調和が「睡眠力」
睡眠と覚醒のシステムは、心身の状態から独立して存在しているのではありません。
・体内時計(光とリズム)
・自律神経系(緊張orリラックス)
・エネルギー代謝(食事)
・内分泌機能(ストレス反応)
・体温調節
の5つの総合的な調和によって保たれています。
眠ろうということ「だけ」を追いかけると、ストレスが高まって余計に眠れなくなります。
睡眠不足が続いたあとは長く眠れるように、睡眠自体は自動的に調節されるという機能を持っています。
心身を総合的に睡眠に望ましい状態にすることで、結果としてよい睡眠が得られることになるのです。
(本郷玖美)
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| 2009年10月19日 18:34 | | この記事のアドレス URL |
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