(講演レポート)支え合う家族の力と心の回復

2009年11月27日(金)、津田ホール(東京都渋谷区)にて、精神研都民講座「支え合う家族の力と心の回復―家族ライフサイクルの視点から―」という講演が行われました。
その聴講レポートをお送りします。


精神研都民講座
平成21年度テーマ「心の回復力とは何か」

第5回「支え合う家族の力と心の回復―家族ライフサイクルの視点から―」
平成21年11月27日(金) 津田ホール(東京都渋谷区)

講師:中村心理療法研究室室長 中村伸一氏

「家族ライフサイクル」の6つのステージ

「家族」も個人のように段階を経て発達するものとしてその段階を6つのステージに分け、それぞれの《特徴》《現れやすい問題》《介入(問題解決のためのアドバイス)》を解説しました。

1.出会い〜結婚
《特徴》
・結婚前の交際期間6か月以上3年未満に離婚が少ない(3年を超えると交際が周囲に認知され、他の異性からのアプローチがなくなる?)
《問題》
・家事などの役割分担の行き違い(典型例:結婚前は家事も平等負担といっていた夫が、結婚後何もしてくれなくなった)
・セックスレス
《介入》
・「家」重視か「夫婦」重視か、を中心に「どのような『文化』を築くか」の話し合い
・「結婚」への価値観の共有
・セックスセラピー

2.就学前の子どものいる家族
《特徴》
・祖父母に協力を仰ぐかどうか、など、子育ての役割分担に迷いやすい
・親であることへの責任を負うのが遅くなりがち
・夫の出世と妻の犠牲との葛藤
・高い離婚率(まだ若いので仕事も配偶者も「次」が見つかりやすい?)
《問題》
・夫婦間コミュニケーション不足により、お互いの努力が見えない
・妻のうつ病……専業主婦の場合早期発見しにくい→献立を立てられるかどうかに注意
・浮気(浮気発覚の8割が携帯、またはパソコンの記録から)
・児童虐待
《介入》
・不幸な状態がいつまでも続くわけではない→「あと5年経ったら?」と想像させる
・「どんな夫婦でもこの時期は大変」とアドバイス

3.小学生の子どものいる家族
《特徴》
・一般的にもっとも平穏なステージ
・妻の仕事開始、または再開
《問題》
・分離不安型不登校(詳しい説明はこちら
・妻の浮気(長期化した精神的欲求不満による)
《介入》
・子どもの問題解決を通した夫婦関係の改善
・浮気カウンセリング→浮気した方にはまず謝罪を求め、その上で浮気前の夫婦関係について浮気の原因となるものを探る

4.思春期・青年期の子どものいる家族
《特徴》
・「世代間境界」(両親である夫婦間には強い連合があり、夫婦と子ども世代との間には良い意味での無関心がある状態)を、試行錯誤しながら形成する
・「反抗期」は必ずしもあるわけではない(明確な反抗期は8割の子どもには見られない)
・「祖父母世代の衰弱」「両親と子どもとの葛藤」が同時に来る→「板挟み世代」となる
・経済的収支が一番大きくなる
《問題》
・不登校、家庭内暴力など子どもの問題が起きやすい
・夫のうつ病(働き盛り世代の頑張りすぎ)
《介入》
・個人でなく家族単位での介入が必須
・健全な世代間境界を作る(例:不登校の子どものいる家庭は、父親と母親とが反発あるいは無関心、父親と子どもとは無関心、母親と子どもとは葛藤しながらも強固に結びついている場合が多い)

5.成人した子どものいる家族
《特徴》
・子どもが家を離れ夫婦が再び向かい合う→子どもと「大人同士の関係」を築く
・祖父母の世話あるいは死去→祖父母との新しい関係、良い関係の再構築
《問題》
・子どもの「引きこもり」……成人しても社会に出られない子ども
・「空の巣症候群」……子どもの巣立ち後、子どもを生きがいにしていた妻のうつ病発症→夫は無関心
・祖父母の世話をめぐるトラブル……認知症の症状の出方は家族の問題を映している(例:嫁姑関係にしこりがあり、姑がなくしたものを「嫁が盗んだ」と言うなど)
《介入》
・迫り来る夫婦2人だけの生活の計画を立てる
・子どもとの明確な世代間境界を作る……夫婦の問題に子どもを巻き込まない

6.子どもが結婚し新しい家庭を作る
《特徴》
・夫の退職、夫婦の「新」生活が始まる
・人生の回り舞台がすべて見える……孫の誕生=「生の始まり」から祖父母の死去=「生の終わり」まで
・老後の身体的・経済的不安
・夫婦がそれぞれお互いの死を受け入れる準備
《問題》
・夫の「退職うつ病」
・「濡れ落ち葉」「粗大生ゴミ」「熟年離婚」……共に向老期を過ごせない
・夫の癌発症……定年前後に癌が見つかることが多い
《介入》
・「2度目の新婚時代」という考え方
・仕事中心の生活ではできなかった新しい楽しみの発見

家族ライフサイクルを治療に生かす

家族ライフサイクルの6つのステージを見てきましたが、家族が問題を抱えるのは家族ライフサイクルの節目であることが多いのです。
また、現在の家族のあり方に問題が起きると、過去のステージに退行します。
よって、家族ライフサイクルを前に進めることが重用となります。
例えば夫婦の問題ならば、結婚記念日を祝う、問題を解決した後での「本当の意味での結婚式」を挙げる、など。
子どもの問題ならば、たとえ不登校だったとしても家族で卒業祝いをする、引きこもりでニートであっても「成人祝い」をする、など家族ライフサイクルを前に進めるための「儀式」をするのも大事です。
また、人生設計ならぬ「家族設計」をたて、未来の家族ライフサイクルについて予測することもいいでしょう。

家族ライフサイクルという考え方により、家族が抱える問題やその解決方法も見えてくるのです。


本郷玖美



 

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  | 2009年12月07日 10:11  | この記事のアドレス URL  |

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