摂るべきたんぱく質は80g〜110g!

うつ病回復に欠かせないセロトニンの材料となるたんぱく質、その摂るべき量は体重1kgあたり1g… じゃないよ、というお話です。

摂るべき量は所要量(推奨量)ではなく目標量(摂取基準)

まずはたんぱく質の目標量(摂取基準)と実際に摂取できている量のデータから。
目標量*1摂取できている量*2
18-29歳男性109g±23g74g(68%)
30-49歳男性109g±23g74g(68%)
50-69歳男性101g±22g80g(79%)
18-29歳女性80g±17g62g(78%)
30-49歳女性83g±17g61g(73%)
50-69歳女性78g±17g67g(86%)
※身体活動レベルがU(通勤や家事もするがデスクワーク中心)の人の場合 ※太っていても筋肉量が標準体型の人と同じなら摂るべきたんぱく質の量は同じ

たんぱく質の所要量(推奨量)と言えば、長らく「体重1kgあたり1g」が目安と言われており、現在も栄養の専門家やフィットネスのアドバイザーであってもこの数字を使っています。
そこからすると、たんぱく質の目標量(摂取基準)が83gや109gというのは体重1kgあたり1.6gほどに相当します(30-39歳男性の平均体重 69.2Kg、30-39歳女性は 53.6Kg *3)。

そんな話聞いたことないよ、という人も多いでしょうが、wikipedia のたんぱく質のページもこうなっています。


必要量(推定平均必要量)
体重70kgの成人の日本人ならタンパク質の必要量は、50g/日

摂取基準
男性では、2660 kcal/日 x 0.15 / 4 kcal/g =100g/日
女性では、1995 kcal/日 x 0.15 / 4 kcal/g =75g/日
*4

「体重1kgあたり1g」という聞き慣れた表現はどこにもありませんし、数字に2倍ほど開きがあるのにどちらが正しいのかも分からない書き方です。
実は摂るべきたんぱく質の量は目標量(摂取基準)で示される量であり、それは従来の所要量(推奨量)よりずっと多いのです。


必要量、所要量、目標量の違い


簡単に言うと
  1. 必要量(推定平均必要量):50%の人は肉体の維持(新陳代謝)が出来るが残りの人には不足な量
  2. 所要量(推奨量):98%の人は肉体の維持(新陳代謝)が出来る。生存にギリギリの量
  3. 目標量(摂取基準):生活習慣病になりにくくなる(上記2つより多い量)。これが現在での摂るべき量

なお、日本ではたんぱく質には耐容上限量(長期的に摂り続けても害のない量)は決められていませんので、摂りすぎかどうかを量だけで判断することは出来ません。


必要量(推定平均必要量)と所要量(推奨量)


必要量(推定平均必要量)をもとに所要量(推奨量)を決める、という関係。
所要量とは第6次改定日本人の栄養所要量(2000年)までの呼び名で、日本人の食事摂取基準(2005年版)からは推奨量と呼ばれています。
今でも常識とされている「たんぱく質は体重1kgあたり1g」がこの所要量(推奨量)。

推定平均必要量  必要量の平均値の推定値を示すものとして「推定平均必要量」を定義する。つまり、当該集団に属する 50% の人が必要量を満たす(同時に、50% の人が必要量を満たさない)と推定される摂取量として定義される。  推定平均必要量は、摂取不足の回避が目的だが、ここでいう「不足」とは、必ずしも古典的な欠乏症が生じることだけを意味するものではなく、その定義は栄養素によって異なる。

推奨量
 母集団に属するほとんどの人(97〜98%)が充足している量として「推奨量」を定義する。推奨量は、推定平均必要量が与えられる栄養素に対して設定され、推定平均必要量を用いて算出される。
*5

たんぱく質の必要量(推定平均必要量)と所要量(推奨量)を決める方法は窒素出納実験(の結果が載っている文献の平均値)。


窒素出納実験により測定された良質(動物性)たんぱく質のたんぱく質維持必要量を基に、それを日常食混合たんぱく質の消化率で補正して推定平均必要量算定の参照値を算定し、その上に個人間変動を加えて推奨量を算定した。
*6

これは、現在の肉体を維持するのに最低限必要なたんぱく質はどれだけかを調べる実験。食品として食べたたんぱく質に含まれる窒素と排泄物として出された窒素を比べ、両方が同じになる、つまり体内で不足も過剰もない量を探します。食べた窒素より排泄される窒素の方が少ないことを「窒素出納バランスが負である」といい、たんぱく質が不足していて体内の細胞やホルモンを作れず新陳代謝が出来なくなっていることをあらわします。


目標量(摂取基準)


生活習慣病になりにくくなるための栄養の量。必要量(推定平均必要量)と所要量(推奨量)よりも多い量です。

生活習慣病の予防を目的として、特定の集団において、その疾患のリスクや、その代理指標となる生体指標の値が低くなると考えられる栄養状態が達成できる量として算定し、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量として「目標量」を設定する。
*7

生活習慣病は「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」 *8 とされています。


目標量(摂取基準)が普及しない理由は、意味が分からず計算も面倒だから?


このように現在では目標量(摂取基準)という多めの量で生活習慣病を防ぎましょうということになっているのですが、これがまったく普及しないのはなんと言っても必要量(推定平均必要量) /所要量(推奨量) /目標量(摂取基準)という言葉の分かりにくさと計算の面倒さでしょう。

3つの単語とも内容を連想しにくく、また同じものを機関やサイトごとにバラバラの用語で呼んでいたりします。必要量(推定平均必要量)という言葉から、それが半分の人にとっては新陳代謝さえ出来ず肉体を維持できない量と連想できる人はいないでしょう。

エントリ冒頭の表には目標量(摂取基準)の例を示しましたが、これは多くの人が当てはまるであろう身体活動レベルがU(通勤や家事もするがデスクワーク中心)の場合のサンプルです。日本人の食事摂取基準(2015年版)にはこのような表はなく年齢 /性別 /身体活動レベルから自分で計算しなくてはならず、その結果も83g±17gなどと幅があります。もっとも、必要量(推定平均必要量)と所要量(推奨量)を決める根拠となった窒素出納実験15本の実験結果 *9 を見ると、結果は 0.46g〜0.96g と2倍の範囲でバラついているので、従来のように「体重1kgあたり1g」といった単純さこそが無理があった、と言うべきかも知れません。

これらのことが重なって、栄養を専門とする人でもいまだに「たんぱく質は「体重1kgあたり1gで足りる」という情報のままなのでしょう。


出典


*1 たんぱく質の目標量
日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要(厚生労働省) p.7-8
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000041733.html
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

*2 実際に摂取できている量
平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省) p.31-32
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf

*3 平均体重
厚生統計要覧(平成30年度)第2編 保健衛生 第1章 保健
https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_2_1.html
第2-6表 身長・体重の平均値,性・年次×年齢別
https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/data30k/206.xls

*4 wikipedia のたんぱく質のページ
https://ja.wikipedia.org/wiki/タンパク質#タンパク質の必要量と摂取基準

*5 推定平均必要量と推奨量の定義
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html
I. 総論 (策定方針、策定の基本的事項、策定の留意事項、活用に関する基本的事項) p.4
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000083870.pdf

*6 窒素出納実験とは
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html
II. 各論 たんぱく質 p.90
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042630.pdf

*7 目標量の定義
→ *5 と同じリンク先の p.6

*8 生活習慣病の定義
生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について(意見具申)
https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/0812/1217-4.html

*9 窒素出納実験15本の実験結果
→ *6 と同じリンク先の p.91



 

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  | 2019年11月27日 20:38  | この記事のアドレス URL  |

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