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うつ病とは何か?

…というのはどこのサイトにも書いてあるから、別にここで書く必要もないかも知れないが、「うつ病ってセロトニンの伝達不良でしょ?」といった誤解のまま読み進められると困るので、ここでまず定義から。


うつ病とは「一連の症状のかたまり」を指す。「セロトニンの伝達不良」というのはうつ病のメカニズムのごくごく一部であることに注意。その証拠は、脳内(正確には脳細胞の間)のセロトニン濃度は抗うつ剤を飲んで30分程度で上がっているのに 30分ではうつ病は治らないということ。実際には効果が実感できるまでに早くて1週間、ましてや寛解(「かんかい」:とりあえずうつ病前のように日常生活を過ごせるようになること)までには半年〜数年というところだろう。あなただってそれで困っているからこのサイトに来たはずだ。ほら、この時点で「うつ病=セロトニン伝達不良、ではない」ことがはっきりした。



そんなわけで、うつ病の定義のおさらい。有名な「 DSM-IV 」というアメリカ製診断マニュアルが一般的なので引用してみる。日本でも医者が患者を診る時の基準に、たいていコレを使っている。

原文は非常にややこしく書いてあるので、内容を省かずに簡単にしてみた。

最近2週間の生活が、以下の症状のうち5つ以上のせいで暮らしにくかったら、あなたは重いうつ病だ(ただし、薬物乱用やケガ・病気などが原因である場合は除く)。

  • 気分:ほぼ毎日、一日中ゆううつ。または、ほぼ毎日、一日中無気力で、何をやっても嬉しくない。
  • 食欲:ダイエットしてないのに体重が急増/急減した(目安は 5%/月)。または、ほぼ毎日食欲がないか、あり過ぎる。
  • 睡眠:ほぼ毎日、よく眠れないか眠りすぎ。
  • 意欲:ほぼ毎日、焦っているか、または何もやる気がない。
  • 体力:ほぼ毎日、疲れやすいか、または行動を起こすのがおっくう。
  • 気分:ほぼ毎日、全てが無価値のように思うか、または根拠のない罪悪感がある。
  • 思考:ほぼ毎日、思考力や集中力がないか、または決断する時に迷いすぎる。
  • 思考:死について何度も考えているか、または自殺したいと思う。

なお、これを満たさなかったら健康という意味ではない。うつ病の診断には、上記の DSM-IV マニュアル以外にも「ベックのうつ病自己評価尺度」などさまざまなものがある。原因と関係なく、「ゆううつな気分か無気力感がいつまでも晴れない」ならうつ病と考えても間違いではないだろう。いいかい、「原因と関係なく」、だ。たとえあなたの脳ですでに充分な量のセロトニンが伝達されていても、ゆううつで無気力で会社に行きたくない状態が続いていたらうつ病なのだ。



このサイトでは、あなたはすでに「自分はうつ病だ」という自覚を持っていると仮定して話を進める。あなたが軽いうつ病か重いうつ病かここで白黒つけることには意味がない。このサイトの目的は、あくまであなたを治すことだ。そして、治すための方法は重症者でも軽症者でも基本は同じなのだ。



なぜ、あなたには
抗うつ剤が効かないか

 現在主流の抗うつ剤は、次の2つの仮定の上に成り立っている。

  1. うつ病の原因はセロトニンやノルアドレナリンの不足であり、それらを補うとうつ病は回復する
  2. セロトニン類が脳細胞に再吸収(横取り)されるのを邪魔すると、結果的に脳細胞の間にセロトニン類が増えた状態を保てるはず

この仮定を「モノアミン仮説」という。モノアミンとは、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の総称だ。

もしこれらの仮定が正しいなら、抗うつ剤は全ての人に対して、飲んだ30分後には効果を生んでいるはずだ。だが、実際には「抗うつ剤の革命児」とまで呼ばれたプロザックでさえ、効果のある人は飲んだ人のうち6割程度、しかも効果が出るまで2週間以上かかる。

 そう、抗うつ剤が効かない人はたくさんいるし、効いたとしても即効性ではない。しかし、それがなぜなのかを分かりやすく扱っている本やサイトはどこにもない。みんなが本当に知りたいのはそこなのに、だ。



 では、そこをはっきりさせよう。
まずは抗うつ剤のメカニズムのおさらい。


※以下、話を簡単にするためセロトニンだけに絞って書く。ノルアドレナリンに対してもだいたい同じと考えてもらいたい。

 これは、脳細胞の間でのセロトニンのやりとりを表した図。黒い点がセロトニン。上から下の受容体までスムーズに移動してくれれば、脳細胞の間に「現在は安心してよい」という情報が伝わる。

 で、途中で赤い点線のように戻ってきてしまうセロトニンがある。これを再吸収といって、これが起きると信号が伝わらないため、「安心してよい」という情報が途切れてしまう。

 この再吸収があるから「安心してよい」という精神状態になれなくて不安やゆううつが起きるのだ、というのが 抗うつ剤の大事な前提である。

※正常な人でも、なんと放出されたセロトニンの7割が再吸収側に戻ってきてしまうそうだ。

 ご存知の通り、抗うつ剤 はこの再吸収側の穴をふさいで邪魔をする薬だ。セロトニンのUターンを邪魔して一方通行にすると、信号がうまく伝わって精神状態が安心するという理屈である。

まぁ、ここまでは良い。

 では、この仮定が崩れたらどうか。例えば、

  1. セロトニンはあるが、抗うつ剤が再吸収口の形に合わないために邪魔できない
  2. セロトニンは作られているし放出もされているのに、受け取り側へ届く前に壊れてしまい、信号が正常に伝わらない
  3. セロトニンが受け取り側の近くまで正常に届くのに、受け取り側の穴が少なかったり感度が悪いために、結果としてセロトニンが受け取られない
  4. セロトニンを作る機会がないのでセロトニンが作られていない
  5. そもそもセロトニンを作るべき材料(アミノ酸)が足りなくて、セロトニンが作れない

といった場合だ。

例えば、1番目のケースは「抗うつ剤をいくら飲んでも効果がない」という形で現れる。セロトニンの再吸収口は6種類あるが、その全てをふさげる薬はまだ存在しないからだ。ふさいでいない再吸収口から再吸収が起きている限り、その抗うつ剤はあなたにとって効果がない。

6種類の再吸収口とは以下の通りである:

  • S-S
  • S-L
  • S-XL
  • L-L
  • L-XL
  • XL-XL

S , L , XL というのは遺伝子の長さを表す。セロトニン再吸収口を形作る遺伝子は2つが対になった構造をしているのだが、その各遺伝子が Short か Long か XtraLong かという命名だ。なお、S を含む人は環境適応が苦手で不安になりやすい傾向がある(東洋人の 80% はこのタイプで、中でも日本人では S-S の人が最も多い)。逆に西洋人は L を含む人が 60% と多数派である。


 2番目のケースを「モノアミンが酵素に酸化させられた」と言う。モノアミンが酸化させられて壊されてしまうと受け取り側にセロトニンが伝わらず、結果としてうつ状態が発生する。そして、このケースの場合は「モノアミン酸化酵素阻害剤(MAO阻害剤)」という薬を使うと症状が軽くなる。


 3番目のケースでは、ECTといって脳に電撃を与える治療法が有効。受容体には14種類あるが、脳に電撃を与えるとそのうちいくつかの受容体が増えるのだ。

これら3つのケース=従来の治療法では、どれも過程こそ変われど結果的に抗うつ剤が効かない。しかも、どの方法も「少ないセロトニンを何とかやりくりする」という対症療法に過ぎず、「そもそもなぜセロトニンが減ったのか、減ったものをどう増やすのか」という根本治療ではない。



そして、今まで見過ごされて来たのが4番目と5番目のケース。今までの治療法、つまり再吸収抑制や受容体活性化というのは、セロトニンは(少しだけ)あるが伝達がうまくいってないだけだという前提の上になりたっている。つまり、これらの治療法はそもそもセロトニンがなければ意味がない(伝達のさせようがない)。 このサイトのアプローチはこの点に注目したもので、「セロトニンが減った原因を解消してセロトニンをたくさん作らせれば、多少再吸収されようが酸化されようが構わない」というものである。



うつ病の原因

では、さかのぼって考えて、どうしてセロトニンが作られなくなったのか? について答えたい。
あくまで仮説だが、答えは扁桃体の興奮しすぎだ。



うつ病患者で扁桃体が興奮している例:



どういうことか、順を追って見てみよう。

扁桃体とは脳の中心近い部分にある場所で、感情を生み出す場所と言われてる。見たり聞いたりして認識した事態に対し、それが快か不快かを判断する場所だ。

もし「今は不快な状態である」と扁桃体が判断すると、扁桃体が興奮する=扁桃体に多くの血が流れ込む。そして、以下の3つの反応が起きる:

  1. 扁桃体の刺激は副腎という臓器に伝わり、副腎がコルチゾールというストレスホルモンを出す( asahi.com , 健康フォーラム

  2. 「危機に対処しなければならない」ということで、副腎から意欲ホルモンであるノルアドレナリンが放出される

  3. 「今は落ち着いている場合ではない」ということで、癒しホルモンであるセロトニンの放出を抑制させてしまう

コルチゾールはストレスホルモンともよばれ、生命維持のために「闘うか逃げるか」という選択への準備を全身に促す役目をする。具体的には血圧や血糖値を上げ、食欲を抑制させる。つまり、この反応は原始時代に人間が生き残るのに必要だったものだ。不快な状況、つまり生命の危機を感じた時に「闘うか逃げる」という方法で人間が生き残ってきた名残だ。

原始時代はこれでも良かった。襲われたら、やられる前にやるか、逃げる。危機が去ったらそれでOK。ずっと危機にさらされ続けるようなことはなかったのだ。

ところが現代は違う。ずっと不快な状況なんてどこにでもある。例えば景気が悪くていつクビにされるか分からない、という状況などがそうだ。問題は、このように「不快ではあるが生命の危機と呼べるほどではない」場合でもコルチゾールが出てしまうことと、このような事態は一過性ではなく延々と続くものであることだ。
事態が継続するということは、扁桃体の興奮が収まらずにコルチゾールが出続け、セロトニン抑制とノルアドレナリン過剰も続くということだ。そして、ごく短時間ならば肉体の働きを活発にさせる一連の反応も、長時間出続けると悪影響の方が大きくなる。

悪影響とは、上記の3反応にそれぞれ対応している:

  1. コルチゾール過剰の悪影響は、なんと言っても脳の血流を悪くして脳細胞に栄養が行き渡らなくさせてしまうことだ。その結果脳全体の動きが鈍くなるし、ある場所(海馬)では脳細胞が死に始める。 あなたの頭のぼーっとした感じは、直接的にはこのコルチゾール過剰が原因だ。

  2. ノルアドレナリンの過剰は、やがてノルアドレナリンの不足へとつながる。というのは、ノルアドレナリンの生産速度には限界があり、備蓄分を放出しきってしまえば枯渇するからだ。結果として意欲がなくなり無気力になる。

  3. セロトニンの生成が抑制されるということは、安心感や満足感が脳細胞の間に伝わることが減るということである。結果として不安感や焦りが抑えられなくなる。

うつ病の正体は、扁桃体が興奮した結果のこれら3つの反応である。決してセロトニン不足ありき、ノルアドレナリン不足ありきではない。だから、本当の治療とは扁桃体の興奮を抑制することと、その抑制が成功するまで上記の3つの悪影響を抑えて時間を稼ぐことだ。



うつ病では、扁桃体の興奮と関連してさまざまな悪影響が起きる。
列挙してみよう。

  • 前頭葉の働きが悪くなる。PETという医療機器で脳の血流を見た結果、特に前頭葉(額のあたり)と海馬で血の巡りが悪いという。血が来ないということは、その部分の脳細胞に酸素や栄養素が届かず、脳細胞が働けなくなるということだ。
     前頭葉の働きは多岐に渡るが、ざっくり言って脳全体のコントロールだ。それには扁桃体の興奮をコントロールするという重要な機能も含まれる。扁桃体が興奮し過ぎたとき、例えば取り越し苦労とか取り返しの付かない過去の事件への罪悪感に対し、「それは考えすぎだよ」とストップをかけ、気分転換させるような機能だ。前頭葉の血の巡りが悪いということは「気分転換がうまく出来なくなる」ということにもつながり、「いつまでもゆううつな気分から脱せない」といううつ病の症状の原因の一つではないかと考えられる。

  • 海馬が小さくなる(萎縮する)。これは脳の中心近くにある場所のことで、長期的な記憶を蓄える機能を担っているとされている。ここが萎縮するので、物覚えや思考力が鈍るのだという説がある。
      海馬は新陳代謝が活発な場所で、言い換えれば多くの血液を必要とする場所である。そして、コルチゾールは脳の血の巡りを悪くする働きがあるので、海馬にも血液が回らなくなり、海馬で新しい脳細胞が生まれにくくなる。それどころか、既にある細胞さえ血液不足で死滅しはじめる。こうして海馬を構成している脳細胞は減っていき、実際にサイズも小さくなるのだ。MRIという医療機器での観察結果では、交通事故などの一過性の重いストレスの経験者ではゼロ〜 10% 、戦争などの慢性的なストレス経験者では 40% 〜 50% も海馬が小さくなっているのが分かったそうだ。

  • 血液中のコルチゾールの濃度が慢性的に高い。つまり脳も体も常に興奮状態になっており、休まるヒマがない。この状態が長く続くので脳や内臓はすっかり疲弊してしまうと言われている。

  • セロトニンが少なくなる。ただし、セロトニンが足りなくなる理由は単純に抑制されるからだけなく、以下の複数が同時に成立することもありえる:
    • そもそも作る材料(アミノ酸)が足りない
    • 作る能力が低下している
    • 作られてはいるが正常に使われる前に横取り(再吸収)されている
    • 作られたものが酵素によって捨てられて(酸化させられて)いる

  • ノルアドレナリンが少なくなる。この理由も単純に備蓄分を枯渇させてしまうだけなく、以下のものが考えられる。なお、複数が同時に成立することもありえる:
    • そもそも作る材料(アミノ酸)が足りない
    • 作る能力が低下している
    • 作られてはいるが正常に使われる前に横取り(再吸収)されている
    • 作られたものが酵素によって捨てられて(酸化させられて)いる

  • 副腎が肥大する。これは扁桃体からの刺激によって常にコルチゾールを量産させられているため、いわば鍛えられた結果と言われている。
    通常の人では副腎を(正確には間接的に、CRFという物質を与えて)刺激すると副腎からコルチゾールが出てきて血液中のコルチゾール濃度が上がるのだが、うつ病患者は上がらない。これは、副腎がすでに能力の限界までコルチゾールを作り続けているために、今さら新しい刺激を加えても副腎がこれ以上頑張れないからだと言われている。



治すために知っておきたい
3つのポイント

「で、どうすれば治るの? 」 … いよいよ核心を言おう。

本来は扁桃体の興奮さえ収まってくれれば大部分は済む話。だが、その方法が現在見つかっていないのだ。

どういう時に扁桃体が興奮するかというと、1つは今現在の状況が不快な時。2つめは過去の不快な状況を思い出した時。特に2つめの方は、自分が意識しなくても=無意識のうちに過去の記憶が反すうされていても起きてしまう。これは自分の意思でどうにかできるものではない。

それでも、健康な人であれば扁桃体が興奮しすぎたら前頭葉が抑えてくれる。しかし、うつ病の場合は慢性的な血行不良で前頭葉が弱っており、扁桃体を黙らせる力を失っているという悪循環が起きているので、もはや止める手段がないのだ。一般的に言われている「うつ病には休養が必要」というのは、「扁桃体をこれ以上興奮させるな」という意味だ。


ではどうするか? ポイントは3つ。この3つがサイトの表紙で言っている「一刻も早く治すために知っておきたい3つのポイント」だ。


  1. 扁桃体を興奮させるような記憶が薄れるまで時間をかせぐ
  2. 扁桃体の抑止力を用意する
  3. 扁桃体が起こしてしまった悪影響をカバーする



具体的には、

  1. 扁桃体を興奮させるような記憶が薄れるまで時間をかせぐ
    • ストレス源から離れて気を紛らわせるようなことをし、扁桃体をこれ以上興奮させない
  2. 扁桃体の抑止力を用意する
    • 前頭葉の働きを回復させ、扁桃体を抑制させる
  3. 扁桃体が起こしてしまった悪影響をカバーする
    • コルチゾールを減らして脳細胞がこれ以上死なないようにする
    • 脳細胞の材料となるアミノ酸を摂り、死滅した脳細胞が再生するのを助ける
    • 脳全体の血流を増やして思考能力を取り戻す
    • セロトニンとノルアドレナリンの材料となるアミノ酸を充分に摂り、これらが合成されるのを助け、精神状態を安定させる
    • やらなければいけないことを減らし、ノルアドレナリンの消費を抑えて枯渇を防ぐ
    • セロトニンを作っている臓器を光と運動によって刺激し、セロトニンをたくさん作らせて精神状態を安定させる
    • 自律神経の働きを正常にするために生活サイクルを正す



どうだろう。あまり馴染みのない手段ばかりに見えるかも知れないが、これらはうつ病のメカニズムに忠実に対応して手を打った結果だ。「良い休養」の効率を追求していった結果とも言える。



なお、今までの「抗うつ剤を飲んで安静にする」という手段は否定しない。あれはあれで意味がある。しかし、それだけではいつまで経っても治らないという人や、いつ治るか分からないのを待ってはいられないという人に、少しでも早く治る方法を教えたいのだ。

だから、まずは医者にいって抗うつ剤をもらい、出来れば安静にしていること。どうしても仕事が休めない、ストレスから逃げられないという場合は、それはそれで仕方がない。治る速度は少し遅くなるが、何とかなるので安心して欲しい。


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